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高等教育でAIライティング検知を活用するには:レスリー・レイン博士が教える5つのヒント

The Turnitin Team
The Turnitin Team
Audrey Campbell
Audrey Campbell
M.A. in Teaching; Senior Marketing Writer

昨年来、学術環境における人工知能(AI)とAIライティングの導入が、教員や教育機関の強い関心を引く重要なトピックとなっています。

そこで、20年近い経験をもち、米バージニア州のリンチバーグ大学で准教授を務めるレスリー・レイン博士に、AIライティングがカリキュラムにもたらす可能性を生かす方法について知見を伺いました。

インタビューでは、博士は主に5つの分野に焦点をしぼってAI活用のためのヒントを教えてくれました。

1.AIライティングツールを学習の補助として取り入れること
2.建設的な活用に重点を置くこと
3.独自の思考を奨励すること
4.技術の変化を受け入れること
5.AIツールを学術機関の方針に位置付けること

AIとAIライティング検知ツールを教育現場でいち早く活用してきたレイン博士の上記のヒントや経験談、専門知識は、テクノロジーが牽引する現在の学術環境においてとくに重要です。

レイン博士のEdTechとAIツールの活用歴

レイン博士はリンチバーグ大学の教員として、教育テクノロジー(EdTech)とAIツールの開発および活用に深く携わってきました。2004年の秋にリンチバーグ大学に着任して以来、新入生向けのライティング授業を延べ76回担当し、104を越える授業でTurnitinの製品を活用してきました。この豊富な経験により、学内では、カレッジ・ライティング部署のコーディネーターを務める「Turnitinの第一人者」として重要な役割を担っています。

TurnitinのAIライティング検知機能がリリースされる前から、レイン博士は学生へのフィードバックと採点プロセスの効率化のためにTurnitinの製品を愛用してきました。つまり、博士はAI検知機能を取り入れる準備ができていただけでなく、Turnitinのワークフローにすでに精通していたのです。

効果的なAIライティング検知ツールが登場する前の苦労を振り返って、博士は「オンラインの検知ツールにテキストをコピー&ペーストするのは本当に時間がかかる作業でした」と述べます。AIライティング検知は必須のプロセスですが、非効率かつ不正確であっため、信頼できる効率的なソリューションの必要性が浮き彫りになりました。TurnitinのAIライティング検知ツールは、一貫性と待望の効率性を提供してくれるゲームチェンジャーとなったのです。

「小論文の採点には時間がかかります。しなければいけないことをするために必要な時間を非常に細かく調整していますので、TurnitinにAIライティング検知機能が搭載されると聞いて大喜びしました。これですべてを1つの環境にまとめられるようになるのですから」

他の多くの教員と同様に、レイン博士も学生の論文のアカデミック・インテグリティ(学問における誠実性・公平性・一貫性)を確保しつつ採点プロセスを効率化するというアイデアを気に入りました。2023年10月にリリースされたTurnitinの新たな類似性レポートは、類似性チェックとフラグ付け機能、AIライティング検知機能を1つのワークフローにまとめ、見やすさとシンプルさを追求した、完全統合型のユーザー体験を提供しています。レイン博士は「1000回もクリックするような必要がなくなりました。フィードバックも採点もAI検知も盗用・剽窃の検知も、すべてそろっていますからね」と評価します。

AIを教育ツールとして活用する価値と課題

レイン博士のアプローチの中心的なテーマは、教育におけるAIの建設的な活用です。AIをアカデミック・インテグリティの脅威と見なすのではなく、学習プロセスの中にAIを組み込むことを提唱します。博士は「新入生のライティングの授業ではAIを実際に用いて教えています。だから、ほぼ毎回の授業で学生はChatGPTを使っています。このようなAIを使った実践的なアプローチにより、学生はこれらのツールを効果的かつ倫理的に活用し、使いこなすスキルを身につけるのです」と説明します。
AIツールを授業にうまく導入した事例は北米中で数多くあります。例えば、147の中学校と高校から18,700人が参加したアメリカの研究では、代数の成績変化を分析した結果、AI教育ソフトウェア「MATHia」を従来の教科書と共に使用した生徒は、教科書のみで学習した生徒よりも平均点が顕著に高かったのです(ペイン他, 2014)。また、教育における人工知能が単純で反復的な作業を肩代わりすることで、教員の事務作業の負担が軽減することを期待する研究もあります(チン他, 2020)。

とは言え、AIツールの有用性とは別に、レイン博士は学生が文章で独創性を発揮できるよう教育する重要性を強調します。博士は学生の批判的・創造的な思考を促す課題を設計することで、AI生成コンテンツのみに頼ろうという誘惑に学生が駆られないようにしています。

「授業ではChatGPTを使って指導しており、学生達には文章構成やブレインストーミングの補助にChatGPTを使うよう言っています。(Turnitinは)「見つけた!」という検知のために使うのではありません。文章の中で学生がもっと自分の声を発せられるようフォローアップするための、自分自身への注意喚起として活用しています」

レイン博士のAIライティング検知ツール活用の特徴は、懲罰のための手段ではなく、学生の成長に焦点を当てていることです。このようなアプローチにより、学生が懲罰を恐れることなくライティングスキルを向上させ、自分の声を育てようと励む学習環境が生まれます。

またレイン博士が強く意識しているのが、学生にAIライティングツールの適切な使用と引用について教えることです。教員の1つの課題は、AIライティングツールをライティングプロセスにどのように適切に組み込むかで、論文におけるChatGPTなどのツールの引用方法を学生に教えることは当然です。博士は「学生に盗用・剽窃について教えるとき、AI生成文章を(出典を示さずに)提出することも同様にアカデミック・インテグリティ違反になると伝えています。自分の名前を書いて提出する以上、その提出物が自分の作品であるとオーナーコードに誓うことを意味するのだと教えています」と述べます。

著書『International Students: A Conceptual Framework for Dealing with Unintentional Plagiarism(留学生:意図せぬ盗用・剽窃に対処するための概念的枠組み)』の中でアーシュラ・マクゴーワンは、学部生を新人研究者と見なすべきであると指摘します。学部生は、とくに意図しない盗用・剽窃が発生した場合には、指導と支援を受ける必要があると強調します。マクゴーワンによると、そのような状況で提供されるフィードバックは批判的な要素を一切含まず、完全に建設的なものであるべきです(2008)。

これはとくに注目すべきことでしょう。というのも、最新のタイトンパートナーズの調査*によると、教育機関の97%がAIライティングに関する正式な方針を設けておらず、それらのツールの利用・悪用に関する意思決定と指導は個々の教員に委ねられているからです。独自性と不正の境界線がきわめて曖昧なアカデミック・インテグリティの分岐点において、教育機関は学生を罰するのではなく指導するために取り組みを強化する必要があります。
*Tunitinがスポンサーを務めた。

授業で生成AIツールを効果的に活用する方法について(英語)もっと詳しく知る

教育におけるAIの未来

生成AIツールに対する教員の全体的な認識は、過去にはメディアとサイエンスフィクションが流布したAIのイメージからの影響が顕著で、AIとは指導と学びを強化するために活用するものではなく、自分たちの仕事を奪う職業的な脅威であると考えられてきました(ラッキン他, 2016)。

他方、「ネガティブ」な印象がもたれているにもかかわらず、新たなAIツールが一般に公開されるとその活用法を積極的に模索する教育者も大勢います。アメリカの教育省教育技術局は次のことを指摘しています。

「教育者らは、音声認識などのAI機能の活用は、障害のある学生や多言語学習者など、学習用デジタルツールがもたらす適応性と個別化の恩恵を受ける可能性のある学生への支援を強化する機会と捉えている。かれらは、AIが授業の計画や改善にどのように役立つか、授業のための教材を見つけ、選び、採用する過程でどのようにAIを活用できるかを模索している」(カルドナ他, 2023

教育における生成AIツールの役割の未来について、レイン博士は楽観的でありながらも現実的な見方をもっています。博士は、「AIツールの使用に対する学生の意識とスキルはどんどん高まっていくでしょう。そのような未来が決まっているのです。学生にAIの使用をかたく禁じ、もし使用が発覚した場合には罰がくだると学生を脅せると考えるなんて、冗談もいいところです。そのような厳格な方針を設ける大学を見るたびに、『未来を受け入れて!』と思っています。未来はすでにここにあって、どんどん進んでいる。これからも進む一方でしょう」と述べます。

このような前向きな考え方を、AIが教育の必須要素となる未来に向けて教員と学生の双方がもつことが重要です。事実、大半の教員が、学生の職業上の成功のためにAIツールが必要となると強く信じています。さらに驚くべきことに、学生の75%が、教育機関で禁止されていようともAIを使う準備があると回答しており、レイン博士のような教員が責任を持って効果的にAIを授業に組み込む必要性がこれまで以上に高まっていることがわかります。

教員と学術リーダーのためのAIライティングに関する参考記事一覧(英語)を見る

TurnitinのAIライティング指数の解釈と学生との対話方法(英語)について詳しく知る

AIツールを授業でどのように使うのか

研究によると、新たな教育テクノロジーをうまく導入できるかどうかは、その授業を行う教員自身の資質と密接に関連しています(フェルナンデス-バタネロ他, 2021)。このことを念頭に、教員が責任をもってAIをカリキュラムに効果的に取り入れられるよう、レイン博士による5つのヒントをまとめました。

レイン博士からのヒントトップ5

  • AIライティングツールを学習の補助として取り入れること。AIツールを検知目的だけでなく、教育効果を高めるために活用しましょう。正式な指導や許可があるかどうかにかかわらず、学生がこれらのツールを使うであろうことは明らかであるため、このような影響力の大きいものについて枠組みや指導を行うことが有益です。ブレインストーミングや文章編集の練習から、第二言語学習者の支援まで、生成AIツールを積極的・生産的に取り入れる機会は無数にあります。
  • 建設的な活用に重点を置くこと。AIライティング検知は学生のライティングを指導し、改善するために活用できますし、そうあるべきです。AIの活用法については、多くの人が認識している以上にさまざまなことができます。例えば、第二言語学習者が大規模言語モデル(LLM)を搭載した翻訳ツールを使用したかどうかAIライティング検知ツールで確認することもできます。
  • 独自の思考を奨励すること。批判的・創造的思考を促す課題を設計し、学生がAI生成テキストに頼る機会を減らしましょう。ライティングプロセスに焦点を当てた課題を作成することができれば、最終成果物が段階的に形になっていくのを観察できるため、学生が提出物の作成においてAIをフル活用することへの懸念が軽減されます。
  • 技術の変化を受け入れること。圧倒されたように感じるかもしれませんが、教育においてAIの役割が大きくなっていることを認識し、そのための準備をすることが重要です。新たなテクノロジーをカリキュラムに取り入れることに価値があります。教員と学生がアカデミアの中で進化し続けるAIに対応するために、こちらの資料をお役立てください。
  • AIツールを学術機関の方針に位置付けること。AIの進化をつねに把握し、絶えず適応していきましょう。これらのテクノロジーを有効に活用するための指導戦略だけでなく、変化するテクノロジーに対応した学術方針も作りかえて行く必要があります。
AI時代に対応したアカデミック・インテグリティ方針を更新する方法を詳しく知る

まとめ:高等教育でAIライティング検知を活用するには

レスリー・レイン博士の先駆的で実践的な知見は、学術環境でAIを取り入れようとする教員にとって貴重なロードマップとなります。AIの教育的な可能性を重視しつつも学生の成果物の独自性を尊重し、AIライティング検知ツールをさらなる教育のために使うという博士のアプローチは、不安視されることの多いこの分野においてバランスのとれた視点を提供してくれます。

このAI主導の時代で前へ進むために、テクノロジーを活用してアカデミック・インテグリティを保持する方法を見つけることが必要不可欠です。教員や教育機関が積極的に適応することで、有意義かつ倫理的にテクノロジーの可能性を実現できます。このような将来を見とおしたアプローチにより、学生はこれらのツールを使いこなせるようになるだけでなく、その意味も理解するようになり、AIリテラシーが必須となる未来に向けて備えることができるのです。