先進的な授業で活用されるAIライティングのベストプラクティスは、進化し続けています。通常業務にAIを取り入れ、 AIツールを使用してワークフローの効率化を図り、学生の学習をサポートすることは、先入観にとらわれずに受け入れる準備ができていれば、 すべて可能となります。
AIライティングツールは、賛否が分かれるものの、学生や教員にとって有用なリソースとして現代社会に登場しました。 AIライティングは学習のインテグリティを脅かすと考える人もいます。2023年3月に開催された、世界中の教育専門家が参加した国際アカデミック・インテグリティ・センター(ICAI)の年次会議においても、その懸念について 「学校でのAIライティングを禁止すべきか、すべきでないか」議論が交わされました。
一方で、AIライティングツールを授業で活用することに有用性を見出す人も多くいます。AIを活用することで、 学生たちのライティングスキルの向上や教員自身の日常業務の効率化が可能となることに気づき始めています。 この急速に変化するデジタル時代においては、コミュニケーションと情報の共有が私たちの生活に欠かせないものとなっており、 授業でAIを活用することは現実的な選択であるだけでなく、学生が21世紀に活躍するために必要なスキルを身につける機会にもなります。
今回は、AIライティングツールを効果的に授業に取り入れたいと考えている教員の々に向けて、実践的なヒントをご紹介します。さらに、 学生と向き合う有意義で大切な時間を確保するために、どのようにして教員の業務を簡素化したら良いのかをChatGPTに質問してみました。 ChatGPTが回答した使用方法に関するアドバイスから意外な気づきを得られるかもしれません。
授業にAIライティングを取り入れる方法まず、AIライティングの使用が何をもたらすのかを説明し、その有効性と限界を概説することから始めることが重要です。当社のベテラン教育者のみで構成されたTLI (Teaching and Learning Innovation) チームによって教育者および学生を対象に参考資料を作成しました。これらの資料は、 AIが不正使用される可能性を考慮したライティング課題の準備から、 ライティングプロセス全体にわたって独自の思考を展開する方法の伝授に至るまで、授業へのAIツール導入法を提示します。
また、教員がAIライティングツールをカリキュラムに正式に導入するかどうかにかかわらず、 学生が課題にAIツールを使用する可能性が高いことが明らかなため、AIの導入にあたっては、アカデミック・インテグリティの方針を更新することが重要となります。 準備が整い、アカデミック・ポリシーと授業でのAI使用に関する注意事項を全員が理解したら、実践に移りましょう。
学生がAIライティングツールを活用する方法AIライティングツールを適切に取り入れれば、即座のフィードバックや改善点の提案から、ライティングの全体的な習熟度の向上に至るまで、 さまざまな応用が可能になります。教員がこれらのツールを学生に紹介する際には、そのメリットを把握してもらうとともに、適切に使用することで、 ライティング過程でいかにサポートされるのかを理解してもらうことが必要です。
AIライティングツールのメリットを最大限に引き出すために、教員は以下のような戦略で、 ライティング指導にAIライティングツールを導入すると良いでしょう。
- 授業中のAIライティングツールの使用に関するガイドラインの設定
- テクノロジーと人間によるフィードバックの調整
- AIライティングを活用したデジタルリテラシー教育
教員は、AIライティングツールをいつ、どのように使用するかについて明確なガイドラインを定め、 その使用目的はあくまで補助的なものであり、批判的思考や創造性を代替するものではないことを学生に理解してもらう必要があります。 学生がAIからのアドバイスを参考にしつつも、ライティング課程に主体性を保てるように教員は指導する必要があります。
AIライティングツールは、文法やスペルの訂正、語彙力の強化、構文の提案、文体の分析などの機能を提供します。ターンイットインのDraft Coachも、AI技術を活用しており、Google DocsやMicrosoft Wordのリアルタイムでのフィードバック機能を介して、引用、文法、類似性に関するフィードバックを提供します。教員は実例を示し、 実践的な演習に学生が参加しやすくすることで、これらの特徴を理解してもらうことができます。
授業にAIを導入することを選択した教員の多くは、ChatGPTにさまざまな質問をし、 質問の内容によって生成される文章がどのように変化するかを学生とともに調べるようになります。ツールを積極的に使用することで、 AIのアドバイスの根拠が理解しやすくなり、より多くの情報に基づいて、最適な文章を選ぶことが可能となります。
2. テクノロジーと人間によるフィードバックの調整AIライティングツールは有用なアドバイスを与えてくれますが、 AIが生成するフィードバックと人間によるフィードバックの間でバランスを保つことが極めて重要です。教員は、「よくできました」で終わらせずに、課題に対するAIのフィードバックを補完することで、 個別化された指導や建設的な批評を提供することができます。人間とAIのアドバイスの両方について、学生がその根拠を理解し、 ライティングの原則をより深く理解できるようになることが大切です。
形成的評価の際に行われるフィードバックは、学生が学んだことをその後の課題に生かせるようにすることを意図しています。このフィードバックループは、学生にライティング過程を振り返る機会を与え、 自分自身や他の人の文章を批評するよう促し、自分たちがどのように文章を書いているのかを自覚しやすくするのに役立ちます。 AIが生成するフィードバックは、学生のライティング過程にある程度の手がかりを提供することはできますが、 洞察力のある教員による個別化されたフィードバックに匹敵するものはほとんどありません。例えば、ジョン・ハッティ博士の研究では、「次にすべきこと」を示唆するフィードバック、 すなわち課題に設定されている要件に関わる問題に正しく取り組めるように次のステップを明確に学生に提示することの有用性が強調されています。
3. AIライティングを活用したデジタルリテラシー教育アメリカ図書館協会は、デジタルリテラシーを「情報通信技術を利用して情報を検索、評価、作成、 伝達する能力であり、認知的スキルと技術的スキルの両方を必要とするもの」と定義しています。通信技術という言葉をAIツールに置き換えれば、 教員はデジタルリテラシーとAIリテラシーとの間に密接な関係がある理由を理解できるでしょう。
米国マサチューセッツ工科大学のメディア芸術・科学分野の教授、シンシア・ブレアゼール氏によれば、AIリテラシーに高い価値があるのは、「誇張が多く、 混乱しているがゆえに、これらのシステムがどのように機能するのか、どのように作られたのかを学年相応のレベルで理解する必要がある」 からだといいます。「世間では、AIがまるで実体を持たない存在であるかのように論じられている。しかし実のところ、論じられているのは、 実際に人が作り、管理し、操作している『もの』についてなのだということを『学生』は理解する必要がある」。
AIライティングツールが普及するにつれ、デジタルリテラシーとAIリテラシーを教えることが重要になっています。教員は、課題にAIツールを導入する際に、 適切な引用の仕方を教えるだけでなく、AIツールの限界や適切な使用方法についても説明し、 AIが生成したアドバイスに学生が慎重に対処できるようにする必要があります。AIが生成したアドバイスを学生がより広い文脈の中で評価し、 理解できるようになるには、批判的思考スキルを習得する必要があり、その重要性はこれまで以上に増しています。 デジタルリテラシーとAIライティングは密接な関係にあります。どちらも、学生や教員がネット上の情報やテクノロジーを利用して調査を行い、 レポートを作成する際に、きめ細かなアプローチと慎重な判断を要するからです。
AIを活用して教員の日常業務を効率化する方法すべての教員にとって、to doリストにあるすべての仕事を達成するには、1日24時間では足りません。 AIツールはすべての人やすべての業務の問題を解決するものではありませんが、教員が日常業務を簡素化し、 ワークフローの一部を効率化するにあたって、AIの導入をどのように検討したら良いのかについて、 ChatGPTから提供されたアイディアがいくつかあります。人間(私)が慎重にそのアイディアを校閲し、編集を少し加えてできたものが、 以下のヒント集です。
- 採点業務とフィードバックの自動化
- 盗用・剽窃とAIライティングの検知
- 授業計画とコンテンツの作成
- 個別化学習
AIは自動的に課題を評価し、即座にフィードバックを提供し、成績レポートを作成できるので、 採点業務プロセスを効率化することができます。教員は時間を節約できるだけでなく採点に一貫性をもたせることもできます。これにより教員は、 個々の学生のニーズに効果的に対応したフィードバックを提供することに専念できるようになります。
例えば、デジタル採点ツールGradescopeはAI技術を用いて類似性のある回答をグループ化することで、 教員が1つの回答を採点すれば、他の類似の回答すべての評価にそれを適用することができるので、時間を節約できます。また、AIによって自動化された採点は、偏りをなくし、 公平性を保つのに役立ちます。例えば、課題を提出した学生の人柄や、採点する教員の慣れや集中力の度合いなどに左右されずに、 問題に対する解答の内容のみで成績が決まる採点場面を想像してみてください。AIによる自動化がもたらすこれらのメリットにより、 教員は採点業務に費やす時間を減らして、他の有益な仕事に費やす時間を増やすことができます。
2. AIを活用した盗用・剽窃とAIライティングの検知教員はAIを使って、課題にAIが使われたどうかを判別することができます。AIを活用することで、教員はアカデミック・ インテグリティの問題に迅速に対処することができ、公正で倫理的な学習環境の維持が可能となります。これらのツールにより、 教員はAIの不正使用や盗用・剽窃のチェックを手作業で行う必要がなくなるため、これに過剰な時間を費やさずにすみ、 その分の労力を教育に充てることができます。ターンイットインの盗用・剽窃検知ツールによって、教員は盗用・剽窃の有無を即座に知ることができ、 それに関する有用なデータを受け取ることもできます。教員はその情報を統合して次のステップに役立てることができます。
3. AIを活用した授業計画とコンテンツの作成熟慮を重ねて授業計画を立てることは、経験豊富な教員であっても何時間も要する場合があります。学習成果や計画の目標を、 学生の関心や最新テクノロジーとともに組み込もうとするからです。AIは、トピックとなるアイデアを生み出し、関連リソースを提案し、 授業計画の事例や雛形を提供することで、学生を惹きつける授業計画や指導コンテンツの作成を支援します。
ホルヘ・バレンズエラ氏は授業計画を立てる際に、「ChatGPTは、重要なステップ、必要なリソース、予算に関する助言、 スケジュールを素早く提供してくれる」ことを実感しました。Edutopiaのブログでは、 AIモデルとのやり取りが詳しく述べられており、具体的なニーズに合わせてどのように質問を修正したかが紹介されています。トッド・ フィンリー博士は、授業計画、スライドショー、論題、単元の概要など、さまざまな学習教材を作成する際に、 ChatGPTを使って計画の設定を効率化する方法を紹介しています。どちらの教員も、 学生たちに有意義で適切な学習活動を提供できるよう調整を重ねており、好奇心を持ち、先入観にとらわれない姿勢でAIツールに取り組みました。
4. AIを活用した個別化学習AIは、学生の成績データを分析し、各人に合わせた学習ルートを提案することで、個別化された学習体験をサポートします。2016年にビル・ ゲイツは家庭教師役のAIが学生一人ひとりに個別のアプローチを提供し、個人が自分のペースで学習できる世界を思い描いていました。現在では、 アダプティブ・ラーニング・プラットフォームがAIアルゴリズムを活用しており、学生一人ひとりのニーズに合わせた指導を行うことで、 それぞれの得意分野や改善点に基づいて的を絞ったサポートを学生に提供できるようになっています。例えば、 学習障害のある学生や新しい言語を学んでいる学生は、AIを活用することで、構造化された支援を受けながら、 アイデアを発想したり迅速に課題に取り掛かったりすることができます。
AIライティングの倫理的配慮と限界教員も学生もAIライティングツールの潜在的な偏見に注意することが不可欠です。AIを使用するすべての人は、 AIが生成する提案内容が倫理的・文化的規範に沿ったものであるかどうかについて警戒を怠らず、判断力を働かせる必要があります。 教員にも学生にも当てはまることですが、自身に気づきと感受性を育むことで、潜在的な偏見を克服し、 差別や偏見にとらわれないライティングの実践を促進することができるのです。
まとめAIライティングツールを授業に取り入れることで、学生のライティングスキルが向上するとともに、 教員のワークフローの効率改善の機会が数多くもたらされます。これらの強力なツールを活用することで、 学生は一人ひとりに合ったフィードバックを受け、文法や語彙を上達させ、ライティングスキルに自信を持てるようになります。 AIはライティングのパートナーとして、リアルタイムでアドバイスや添削を行い、学生がスムーズに学業に取り組めるようサポートします。 さらに教員は、AIを活用した採点システムを活用することで、時間の節約と客観的な評価が可能となり、 より的を絞った指導や個別化されたフィードバックを提供できるようになります。
AIをライティング過程に取り入れるベストプラクティスとして、自動化のメリットと、人間によるフィードバック、創造性、 批判的思考の重要性との間でバランスを取ることが挙げられます。学生には、自分に代わってアイデアや表現を考えてくれるものとしてではなく、 補助的なものとしてAIツールを積極的に使うよう促す必要があります。AIライティングは、人間の判断や専門知識の代わりとしてではなく、 ライティングプロセスを補完・補強するツールとして使われるものであることを、教員は強調する必要があります。
またAIライティングの導入で、教員はライティングの技術的側面と創造的側面の両方を育む環境を作ることができ、 学生は現代社会でますます普及が進むデジタルツールに適応しながら、必要なスキルを身につけることができます。 ライティング教育の新時代に乗り出すために、AIの持つ可能性を受け入れ、生成AIツールの導入方法を慎重に検討し、 ガイダンスを準備していきましょう。