導入前に抱えていた課題
修士論文と博士論文は、修了後に同校の学術レポジトリに追加され公開されるため、論文の質を担保する上で、 教員による入念なチェックは必要である一方、教員の負担軽減という課題があった。また、学生の課題レポート等の提出も少なくなかったため、 教員の教育指導への負担は大きく、研究に専念できる時間の確保が厳しい状況であった。そのような背景もあり、 iThenticateを導入することで、テクノロジーの活用による剽窃チェックの効率化、 および類似判定の精度向上という期待があった。
選定のポイント
選定の段階でiThenticateが評価されたポイントは、類似の比較対象となる論文数が唯一無二であり、 グローバルにおける利用実績が高く、多言語に対応した類似性チェックツールであることだった。また、クラウドサービスのため、 運用管理面の手間が少ないことも評価され、導入に至った。
福岡工業大学でのiThenticateの活用状況
大学院生は修士論文、博士論文を指導教員へ提出する前にiThenticateでのセルフチェックを行う。2020年からは、 iThenticateの 利用回数の制限を撤廃、積極的な利用を促している。学生の利用における有効性が評価されたことを受け、 教員の利用も拡大している。
<大学院生の利用の流れ>- 対象の大学院生(修士論文・博士論文)は指導教員に提出する前に必ず iThenticateでのセルフチェックを行うように大学院で義務付けている。
- 大学院生はセルフチェック後、論文と類似性レポートを指導教員に提出する。 指導教員は類似性レポートのスコアと類似箇所の内容を確認し、必要に応じて個別にライティング指導を行う。
教員に対しても学生と同様に利用回数に制限を設けていない。学術ジャーナルや学会向けの論文の他、 科研費等の研究助成金の申請提出書類で教員はiThenticateを利用している。
iTheticateの導入により、類似性チェックを瞬時に行えるようになったことで、学生・教員間での添削回数が減少し、 教員のチェック作業に対する負担と時間も軽減された結果、教員が研究に専念できる時間の増加に繋がった。また、 学生にとっても論文提出前に自分自身でチェックすることで、自己推敲の促進と研究倫理の維持・向上に加え、 公正性を担保した論文を能率的かつ効率的に執筆できる体制が整った。
今後の展望
同学ではiThenticateの大学院での導入が、教育の質の保証という側面で、当初の期待に沿った成果を得ている。そんな中、 学生の利用を通して類似性チェックツールの有効性を実感し、積極的にiThenticateを利用する教員の割合が増加している。 学内の研究倫理のガイドラインに遵守した主体的なiThenticateの利用も増加するなど、 研究公正に対して積極的に取り組む土壌が教員間で醸成されてきている。同学では、研究の信頼性や質のさらなる向上に向けて、 教員間でのiThenticateの利用促進を継続して強化する方針である。